『ファミリーツリー』
作 相澤一成

リーディング 宮城県を拠点とする俳優とスタッフ
本編動画
トーク動画

あらすじ

季節は東北の遅い春、太平洋を望む日和山に立つ一本の桜の樹。陽気に誘われて、花見をしようとやってきたのはこの町に住む高橋家の人びと。そこへ東京から帰省した長男がやって来る。大正生まれの曾祖父母から平成生まれの曾孫まで四世代集まっての大宴会、酒を酌み交わすうちに本音も愚痴も飛び出して、会話はあらぬ方向へ…宮城の方言で生き生きと描かれた、海辺のまちのちいさな家族の物語。

作者から

 コロナ禍で迎える「あれから10年」の節目。災害時に演劇は不要なのか?そんな事を考えさせられた10年でもありました。演劇をやる意味は?そして自分に何が出来るのか?自問自答する時間が長く続きました。

 被災した故郷では記憶にある風景が復興のため一つひとつなくなっていきました。そして人が亡くなるたびに、その人が持っている思い出も消えていくことに気がつきました。その土地に、その時代に生きていた証としてそれらを作品に残しておきたい、そして後年、あの時抱いた感情を思い起こす記録になればと思い、この作品を書きました。

 いつでもどこにでもある家族の話。作品を通して、心の中で家族や近しい人と対話して欲しいと思っています。

相澤一成

作者プロフィール

相澤あいざわ一成かずなり
宮城県名取市閖上出身。東京都在住。劇作家・俳優・演出家。宮城の一般人で構成される朗読劇サークル「名取リーディングクラブ」の代表を務める。震災後の母親たちの姿を描いた朗読劇『空に虹が架かるとき』は映像作品としてYouTubeで現在公開中。
俳優としては北野武監督『Dolls』、大林宣彦監督『野のなななのか』、大畑創監督『へんげ』(モントリオールファンタジア国際映画祭特別賞受賞)、日中韓共同制作演劇『祝/言』、弘前劇場『家には高い木があった』など、映画・舞台・CM等に多数出演。

演出者から

あの震災は、地獄でした。
あのとき思い知ったことがあります。
どんなに大切に思う人でも、私の思いと関係なくぷつんといなくなることがあり得るということです。それは、圧倒的な恐怖でした。
震災から6年後に、義母を亡くしました。ぷつん、という別れでした。どうしてどうして、を繰り返し、怒り、もっとできることはなかったのかと後悔し、留守番電話やビデオを繰り返し見聞きました。今でも夢に出てきてほしい、枕元に立ってほしい、と思いますが、義母には会えません。私の修行が足りないのでしょうか。
大切な人を亡くして一番辛いのは、「これから」がないことだと思います。嬉しかったことを思い出すときは、やっぱり嬉しい。そして、では…と問いかける。何も返ってこない。もう「これから」はないのだと思い知る。辛いのはそのときです。
私は「ファミリーツリー」の戯曲を始めて読んだときに、家族の姿があまりに活き活きと描かれていることに、はっとするものがありました。亡くなった人は決して戻ってこないけれど、一緒に生きていくことはできる。そんなメッセージを感じました。 震災から10年を経て、辛い別れを経験しながらも、前を向いて生きていこうとしている方々がたくさんいらっしゃいます。壮絶な別れを経験しながらも、今、きっと違う形で亡くなった方達と一緒に歩んでいる。
家族や友人がみんなで集まり、昔話をし、たわいもないことでいつまでも盛り上がっている。津波も災害も決して奪えないかけがえのないものを、感じ取って頂けたら幸いです。 髙橋菜穂子

リーディング演出者プロフィール

髙橋たかはし菜穂子なほこ
1977年(昭和52年)3月11日生まれ
宮城県仙台市出身。大学時代から演劇活動を開始。
東日本大震災後の2011年6月SENDAI座☆プロジェクト「明日に向かって歌え~アテルイキャラバン再び西へ」仙台・東京公演にて演出家デビュー。
2014年4月から渡部ギュウの一人語り「東北物語」シリーズを演出。
2019年 YONEZAWA GYU OFFICE「税務署長の冒険」「土神ときつね~ふたりのケンジ」構成演出。
2020年から「仙臺まちなかシアター」プロデュース、構成演出を担当。
仙台市主催の企画、劇のまちトライアルシアターでは、子育てを主題にした企画「子育ていろいろシェアリング」のリーダーを務め、2020年の公演「子育ていろいろ晴れときどき嵐」では台本の作成・演出を担当した。

リーディングチーム プロフィール

 『ファミリーツリー』のリーディング映像作成の為、宮城県を拠点とする俳優11名とスタッフ9名が集まりました。俳優の年齢はバラエティに富んで下は小学校2年生、上はシルバー世代。そしてほとんどが劇団の代表というベテラン揃いのチームです。

 俳優、スタッフ共に大半が宮城県内で東日本大震災を体験した事から、10年前、そして現在の被災地を身近に感じつつ、本リーディングに取り組みました。

リーディング クレジット

キャスト

誠一 飯沼由和(言言)
勝男 なかじょうのぶ(劇団三ヵ年計画)
教子 橋浦あやの(他力舎)
兵吉 藤原貢(劇団やんま)
なつよ 武内典子(劇団ひとりっこ)
よしみ 絵永けい(演劇ユニット石川組)
茂 松崎太郎
新造 木村耕祐
正治 白鳥英一(劇団鳥や)
望 渡部光史
さちこ 遊木理央

スタッフ

作 相澤一成
演出 髙橋菜穂子
舞台監督 さとうこう(あやしげ商会)
照明 松崎太郎(アトリエ ミセイ)、柴成美
音響 本儀拓(キーウィ サウンドワークス)、足立友恵
撮影・編集 大宮司勇(idographics)
制作 一般社団法人東北ゑびす・文月奈緒子(ひびこと)

写真提供 相澤一成・名取市震災アーカイブ
協力 伊藤み弥

『ファミリーツリー』はリーディングを60分以内に収める為、テキストレジを行なっております。
オリジナルの戯曲は下記リンク先で読む事ができます。
https://311hiyoriyama.wixsite.com/sonogo

初演時のデータ

月日 2017年3月2日(木) 開演10:00
会場 宮城県名取市美田園第一仮設住宅 集会所

出演 名取リーディングクラブ
誠一 鈴木健仁
勝男 澤畑健一
教子 村上直美
兵吉 大竹瑞子
なつよ 本郷紀子
よしみ 五代儀良子
茂 佐藤稔
新造 菊地悦子
正治 丹野恵子
望 橘内博子
さちこ 長谷川ゆき
ナレーター 相澤美恵

作・演出 相澤一成
制作 伊藤み弥
記録 野呂光江

初演時の画像

ページトップへ↑